個人で学習塾を開業する場合、税金の申告方法には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
このうち、青色申告を選択すると、税制上の大きなメリットを受けられ、経営管理の質も向上します。
学習塾を長く安定して運営していくためには、税金や会計の管理も“もう一つの授業”のように大切です。
青色申告とは?白色申告との違いを理解しよう

青色申告とは、税務署に「青色申告承認申請書」を提出した個人事業主が、一定の会計処理を行うことで受けられる制度です。
一方、白色申告は誰でも簡単に行える代わりに、控除額や経費の扱いに制限が多く、節税効果がほとんどありません。
| 比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除額 | 最大65万円 | なし |
| 帳簿 | 複式簿記(または簡易簿記) | 簡易簿記のみ |
| 家族への給与 | 経費にできる(届出必要) | 経費にできない |
| 赤字の繰越 | 3年間可能 | 不可 |
| 信頼性 | 高い(融資・助成金で有利) | 低い |
特に青色申告の65万円特別控除は非常に大きく、課税所得を大幅に減らせます。
たとえば年間所得が300万円の場合、青色申告で電子申告をすれば実質235万円に圧縮される計算です。
開業から青色申告までの流れ

学習塾を開業して青色申告を行うには、以下の4つの手続きを順番に行います。
① 「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する
まず、事業を始める際に「開業届」を税務署に提出します。
この書類は、“自分は事業を始めた”という正式な宣言です。
主な記入項目は以下の通りです。
開業届の提出後、「開業届受理印」が押された控えは大切に保管しておきましょう。銀行口座の開設や各種助成金の申請にも必要になります。
② 「青色申告承認申請書」を提出する
青色申告をするには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出します。この書類を出さないと自動的に白色申告となり、特典を受けられません。
記入項目のポイントは以下です。
国税庁サイトから用紙をダウンロードするか、e-Taxを使えばオンラインで完結できます。
③ 帳簿をつける(経理を始める)
青色申告では、収入と支出を毎日帳簿に記録する義務があります。
とはいえ、今は会計ソフトを使えば自動化が可能です。
おすすめの会計ソフト
会計ソフトに銀行口座やクレジットカードを登録すれば、自動で経費データが取り込まれ、仕訳も自動提案してくれるため、専門知識がなくても問題ありません。
④ 決算書と確定申告書を作成・提出する
1年間の取引をまとめて「決算書(損益計算書・貸借対照表)」を作成します。それをもとに「確定申告書B」を作成して提出します。
電子申告(e-Tax)を利用すれば、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。紙提出の場合は控除が55万円になるため、できるだけ電子申告を選ぶのがおすすめです。
青色申告の主なメリット

1. 節税効果が非常に高い
青色申告をすると、次のような節税が可能です。
学習塾では、机や椅子、ホワイトボード、エアコン、パソコン、コピー機など、多くの物品を購入するため、減価償却費を活用すると節税効果が大きくなります。
2. 家族をスタッフとして経費にできる
家族が授業補助や事務作業を行っている場合、「青色事業専従者給与」として経費に計上できます。
ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出し、「実際に働いていること」を確認できるようにしておく必要があります。
たとえば、奥様が生徒対応や清掃などを担当している場合、月5万円の給与を経費にすれば、年間60万円を所得から差し引ける計算です。
3. 融資・助成金の審査で有利になる
帳簿を整え、青色申告を続けている個人事業主は、金融機関や自治体から「経営が安定している」と評価されやすくなります。
たとえば、
などの申請時に、青色申告書類を提出すると信用度が高まります。
学習塾で経費にできる具体的な項目

青色申告では、「事業に関係する支出」を経費として計上できます。
ただし、私的利用分は除外し、業務との関連性を明確にすることがポイントです。
| 経費項目 | 具体例 |
|---|---|
| 消耗品費 | ノート、ペン、教材、コピー用紙など |
| 旅費交通費 | 通勤・出張時の電車代、自転車購入費の一部 |
| 通信費 | インターネット・電話代、オンライン授業用通信費 |
| 水道光熱費 | 教室の照明・エアコン利用分(按分して計上) |
| 広告宣伝費 | チラシ印刷費、Web広告費 |
| 減価償却費 | パソコン、エアコン、什器類など耐用年数のある備品 |
| 研修費 | 教育セミナー・講座参加費 |
| 交際費 | 地域の商工会、保護者会などとの交流費 |
自宅を兼ねる場合は、「使用面積比」や「使用時間比」で按分して計上します。
たとえば、1LDKのうち6畳(全体の30%)を塾に使っていれば、光熱費の30%を経費として処理できます。
e-Taxでの申告の流れ

青色申告は、e-Taxを使えば自宅から簡単に申請可能です。
マイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマホがあればオンラインで完結します。
- 会計ソフトで帳簿を入力・集計
- 決算書・確定申告書を自動作成
- e-Taxにデータを送信(署名・送信)
- 控除65万円が適用される
手書きや紙提出よりも圧倒的に効率的で、控除額も10万円多いため、今後は電子申告が主流になるといえます。
注意点とよくある失敗例
青色申告には大きなメリットがありますが、いくつか注意すべき点もあります。
- 開業から2か月以内に申請しないと、その年は青色申告できない
- 帳簿を保存していないと控除が取り消される
- 家族給与の支払い記録がないと経費として認められない
- 現金での取引が多いと、記録漏れが起きやすい
開業初年度からしっかり体制を整え、
「経理=税務対策」と考えるのではなく、「経理=経営管理」として日常的に行うことが重要です。
まとめ:青色申告は「塾経営の信頼をつくる第一歩」
個人で学習塾を開業するなら、青色申告は必ず選ぶべき制度です。
節税効果が高く、帳簿を通じて経営の数字を可視化できるため、事業の健全性と信用を同時に高めることができます。
学習塾は地域密着型の事業だからこそ、誠実な経営と正確な申告が、長く信頼される塾づくりの基盤になります。